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名言No.107 ドリス・レッシング

胸に刻む名言 ~Quotation~ 名言
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本日の名言

It isn’t only the terror everywhere, and the fear of being conscious of it, that freezes people. It’s more than that. People know they are in a society dead or dying. They are refusing emotion because at the end of every emotion are property, money, power. They work and despise their work, and so freeze themselves.

Doris Lessing

日本語訳

人々を凍りつかせるのは、どこにでもある恐怖や、それを自覚することへの恐れだけではありません。それ以上のものがあります。人々は、自分たちが死んでいるか死にかけている社会にいることを知っています。彼らは感情を拒絶しています。なぜなら、すべての感情の果てには、所有、金、権力があるからです。彼らは働き、そしてその仕事を軽蔑し、その結果、自らを凍りつかせるのです。

ドリス・レッシング

構造分析

この文は複数の主節と従属節を含む複文で構成されています。対比と列挙が多用されており、主題が深められています。

  • 主節1:It isn’t only the terror everywhere, and the fear of being conscious of it, that freezes people
    • 主語:the terror everywhere, and the fear of being conscious of it(「どこにでもある恐怖と、それを自覚することへの恐れ」)
    • 動詞:isn’t(否定の状態動詞)
    • 補語:that freezes people(「人々を凍りつかせるもの」)
  • 主節2:It’s more than that
    • 主語:It(省略)
    • 動詞:is(状態動詞)
    • 補語:more than that(「それ以上のもの」)
  • 主節3:People know they are in a society dead or dying
    • 主語:People(「人々」)
    • 動詞:know(「知っている」)
    • 従属節:they are in a society dead or dying(「彼らが死んでいるか死にかけている社会にいるということ」)
  • 主節4:They are refusing emotion
    • 主語:They(省略)
    • 動詞:are refusing(現在進行形)
    • 補語:emotion(「感情」)
  • 主節5:They work and despise their work, and so freeze themselves
    • 主語:They(省略)
    • 動詞:work and despise(「働き、軽蔑する」)
    • 補語:their work(「彼らの仕事」)
    • 結果節:so freeze themselves(「その結果、自分自身を凍りつかせる」)

主な単語の品詞・働きと日本語訳

単語品詞と働き日本語訳
terror名詞 (不可算名詞、主語の一部)恐怖
fear名詞 (不可算名詞、主語の一部)恐れ
conscious形容詞 (補語の一部)自覚している
freezes動詞 (他動詞、述語)凍りつかせる
people名詞 (可算名詞、目的語)人々
more形容詞 (補語の一部)より多くの
society名詞 (不可算名詞、補語内)社会
dead形容詞 (名詞を修飾)死んでいる
dying形容詞 (名詞を修飾)死にかけている
refusing動詞 (他動詞、述語)拒絶している
emotion名詞 (不可算名詞、目的語)感情
property名詞 (不可算名詞、目的語)所有
money名詞 (不可算名詞、目的語)
power名詞 (不可算名詞、目的語)権力
work名詞 (不可算名詞、目的語)仕事
despise動詞 (他動詞、述語)軽蔑する
freeze動詞 (他動詞、述語)凍りつかせる

句動詞、イディオムほか

  • fear of being conscious of it:複合的な名詞句で「それを自覚することへの恐れ」を表します。
  • refusing emotion:慣用的表現として「感情を拒絶する」を意味します。
  • freeze themselves:比喩的な表現で「自分自身を凍りつかせる」を示しています。

人物と背景

ドリス・レッシング(Doris Lessing, 1919 – 2013)は、20世紀を代表するイギリスの作家であり、文学界において重要な役割を果たしました。彼女は、社会的不公正、人間性の複雑さ、個人の自由に関する問題を深く掘り下げる作品を数多く残しました。レッシングの文学はしばしばフェミニズム、心理学、政治をテーマにし、ジャンルの枠を超えて人々に影響を与えました。

彼女の代表作『The Golden Notebook』は、現代女性の自己意識と社会における葛藤を描き、フェミニズム文学の古典として評価されています。また、彼女はSFにも挑戦し、『Shikasta』などの作品で人間の進化や衰退を哲学的に考察しました。レッシングは第二次世界大戦後の混乱した時代を背景に、多くのテーマを取り入れ、社会的抑圧と個人の内面の葛藤を描き続けました。

2007年にはノーベル文学賞を受賞し、その業績は広く認知されています。彼女の作品は現代文学の重要な遺産となり、今なお多くの読者に新たな視点を提供しています。

解説

凍りついた心

「人々を凍りつかせるのは、どこにでもある恐怖や、それを自覚することへの恐れだけではありません。それ以上のものがあります。」 ノーベル文学賞受賞者であるドリス・レッシングが紡いだこの言葉は、現代社会に生きる私たちの心を鋭く捉えています。彼女の視点は、ただ恐怖に囚われるだけでなく、感情を拒絶し、自らを「凍りつかせる」現代の生き方を指摘するものです。その言葉は、私たちが無意識に従っている社会の力学や、日常生活の中で見過ごしがちな内面の葛藤を浮き彫りにします。

恐怖と感情の拒絶――現代社会の冷たさ

レッシングが言う「恐怖」とは、単なる外的な脅威だけではありません。それは、私たちの生活全体を覆う漠然とした不安感でもあります。どこにでもある恐怖、つまり戦争、気候変動、経済的不安定さ――これらの存在は、私たちが日々抱えるものです。そして、その恐怖を自覚することすら、私たちにとっては新たな恐怖となるのです。

しかし、レッシングの言葉が鋭いのは、これが「すべて」ではないことを指摘している点です。恐怖だけで人々を凍りつかせるわけではなく、「社会そのもの」が大きな原因として存在しています。彼女は、人々が「死んでいるか死にかけている社会」に生きていると語ります。私たちは、この社会がもたらす抑圧や冷たさを感じ取りながらも、それに適応するために感情を拒絶する道を選んでいるのです。

感情の果てにあるもの――所有、金、権力

レッシングが鋭く描き出すのは、感情の果てにある「所有」「金」「権力」の存在です。彼女が示す通り、現代社会では感情が純粋な形で受け入れられることは少なく、その行き着く先がすべて物質的価値や社会的地位と結びついてしまいます。

たとえば、喜びや満足感でさえ、成功や富の象徴としてしか評価されない場面が多くあります。悲しみや苦しみは隠され、職場や日常生活の効率性や生産性を損なうものとして片づけられてしまいます。その結果、私たちは感情を拒否し、冷たく自分自身を凍りつかせてしまうのです。

働くこととその軽蔑――矛盾に満ちた日々

さらに印象的なのは、彼女が働くことに対する人々の態度を指摘している部分です。「彼らは働き、そしてその仕事を軽蔑し、その結果、自らを凍りつかせる」と語るこの一節は、現代の多くの人が抱える葛藤を代弁しています。

仕事は生計を立てるための手段であると同時に、自己実現の場でもあるべきものです。しかし現実には、多くの人が労働を嫌いながらも、それなしでは生きられないというジレンマの中に閉じ込められています。この矛盾が、感情をさらに抑え込み、自らを凍らせる行為を助長しているのです。

レッシングの言葉が示す希望――感情を解き放つ

それでは、この凍りついた状態から抜け出すためには何が必要なのでしょうか?レッシングの言葉は一見悲観的に聞こえるかもしれませんが、その中には明確な希望が込められているようにも思えます。それは、「感情」を取り戻し、それを恐れず受け入れることです。

感情は、人間らしさの核心であり、私たちが他者とつながるための鍵でもあります。レッシングが指摘するように、感情を拒絶することは社会的圧力の産物かもしれません。しかし、その圧力に逆らい、自分自身の感情と向き合うことで、人間性を取り戻す道が開かれるのです。

感情の解放がもたらす変化

具体的には、以下のような行動が感情を解放し、凍りついた心を溶かすきっかけになるでしょう。

  1. 自分の感情を認識する 感情を感じることを拒絶せず、悲しみ、喜び、怒りなど、あらゆる感情を受け入れることが重要です。それは、他者とのつながりや自分自身の成長にもつながります。
  2. 働くことの意味を再考する 嫌いな仕事を軽蔑しながら働くことは、感情を凍らせる原因となります。自分の仕事に価値を見いだすか、あるいはもっと情熱を持てる道を模索することが必要です。
  3. 他者との共感を深める 他者の感情に寄り添い、それを尊重することで、自分自身の感情も肯定されます。共感は、孤独や冷たさを解消する力を持っています。

まとめ

ドリス・レッシングが描いた「凍りついた心」は、現代社会の中で私たちが抱える多くの課題を浮き彫りにしています。しかし、彼女の言葉には、その状況を打開するためのヒントも含まれています。私たちは恐れや感情の拒絶を乗り越え、自分自身の感情を受け入れることで、人間としての本来の豊かさを取り戻すことができるのです。

レッシングの洞察に耳を傾け、凍りついた心を溶かし、より温かな未来を築いていきましょう。それこそが、彼女の言葉に込められた真のメッセージではないでしょうか。